振り込み詐欺

 いつも覗いている精神科医のブログに次の内容を見つけました。
 以前から、止める銀行員にけがをさせてまで、振り込みを敢行する
人の話を聞いて不思議に思っていたのですが、少し理解できるような
気がしました。
 詐欺の関係者の方がこの内容を見て、手法をブラッシュアップする
ことがないように願います。



非定型精神病の婦人が亜昏迷や夢幻様状態を呈すると、

息子が逮捕されてしまった。今は警察にいるんでしょう?

とか、

娘が入院してもう死ぬかもしれない。すぐにお見舞いに行きたい。

などの妄想?が出現することがある。もちろん訂正は不能である。この非定型精神病の人の妄想だが、トータルではそうそう目撃するものではないし、そのタイプの患者さん全員に出るわけではない。また、子供がいない婦人には出現しない。

しかしこのタイプの妄想が出る婦人は、生活歴が全く異なるのに訴えが非常に似ていることは注目に値する。

この悲観的な妄想は不安焦燥感を伴い、さほど自分自身の心配をしていないことも興味深い。普通、内因性うつ病の人は、自分のお金がなくなるとか、健康状態が著しく悪化することを心配することが多い。

だから、この妄想は中間的妄想なのである。

僕は退行期ないし老年期の女性への「オレオレ詐欺」が往々にして大成功を収めるのは、彼女たちの根源的な不安感、恐れに触れていることに関係が深いような気がしている。

銀行で振り込もうとする際に、銀行員が「おばあちゃん、それは間違いなくオレオレ詐欺ですよ」と言われているのに、それを押し切ってまで振り込む人がいるからである(つまり訂正不能)。

たぶんあの電話内容は、彼女たちにとってツボにはまってるのであろう。

ずっとなんとなく心配していたことが、「やっぱり」といった感じで現実化したというパーフェクトなワナが存在している。

(当たり前だが、今回のエントリはオレオレ詐欺にはまる人が非定型精神病という趣旨ではない。)