寿限無

 私が好きな柳家喬太郎という落語家が書いた落語の
演目紹介の本をひとから借りて読んだ。
 その中に「寿限無」という演目について面白い話が
あった。「寿限無寿限無五劫のすり切れ海砂利水魚の…」
という長い名前をつけられた子どもの話。
 少し前の話だが、落語の子ど向けの公演の際に「寿限無」を
やると、子どもたちからクレームが起きたという。
 実はその頃、Eテレの「日本語であそぼう」という番組で、
その長い名前が紹介されていて、それを覚えるのが子どもたちの
間で流行っていたとか。
 ところが、柳家とか三遊亭とかの一門ごとに、「寿限無」の
名前が少しずつ違っていて、Eテレのともそれぞれ違うので、
「違う!違う!」という子どもたちからの大合唱になったとか。
 仕方がないので、子ども向け公演のときには、Eテレ版に合わせて
やっているという。
 子どもはまっすぐに育っている。

 長い名前の全体は、「寿限無寿限無五劫のすり切れ海砂利水魚
水行末雲行末風来末食う寝る所に住む所やぶらこうじの藪こうじ
パイポパイポパイポシューリンガングーリンダイポンポコピー
ポンポコナーの長久命の長助」
 何かもっと長いのかと思っていた。
 ちなみに、一門によって「五劫のすりきり」「五劫のすりきれず」とか、
「やぶらこうじぶらこうじ」といったヴァリエーションがあるらしい。

 そういえば、小学校の頃、友達の石川君が「世界で一番長い名前」とか
言って、「寿限無寿限無…」ってやっていたけど、誰も反応していなかった。
私も林家三平柳家金吾郎のように立って漫談をする落語家しか知らないので、
どう反応してよいのかわからなかった。